放浪カモメ
かん高い音が辺りに響き渡り、鴨居は頬を手で押さえていた。

「杉宮……先輩?」

杉宮は鴨居の頬を平手で叩くと胸ぐらを掴んで、鴨居を怒鳴りつける。

「ふざけんなっ!!」

険しい表情で鴨居に迫る杉宮を、岡崎が止めようと近づくのを樹が制した。

岡崎は心配そうに二人の動向を見守る。

「何が助けて欲しくてだ?何が不安で、怖くてだ?ふざけるな!!だったら……」
珍しく感情を曝け出す杉宮に鴨居は驚いていた。

「だったら何で、何であの時に俺に相談しなかったんだよ!?」

大川から突然鴨居に電話がかかってきた時のことを言っているのだろう。

杉宮の腕は震えていた。

杉宮はただ口惜しかったのだ。

鴨居が不安そうな、寂しげな表情をしていたのは気付いていた。

自分を頼って欲しかった。

それなのに鴨居は気を遣って話そうともしてくれなかった。


それがたまらなく口惜くて。

たまらなく淋しくて、杉宮の腕は震えていた。

「なんで二人で飲んでる時に言わなかった!?その後だっていくらでも時間はあったのに。何で……何で俺に気なんか遣うんだよ。」

杉宮は小さな声でそう言うと寂しげに俯いた。

「オレは、ただ先輩に迷惑をかけたくなかっただけで……」

杉宮は掴んでいた手を離すと、腕で目元をこすった。

「馬鹿野郎・カモ。迷惑ってのはな……"かかる"もので"かける"ものじゃねぇんだよ。」


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