放浪カモメ

「お前は何も考えずに俺や、早苗ちゃんや、他の皆を頼れば良いんだよ!!」

杉宮の言葉に鴨居は自分の浅はかな考えが、結局また他の人の為と言っても、自分の為でしか無かったことに気付くのだった。

「そんで、その後に迷惑だったかどうかなんてのは頼られた方が決めることなんだよ。」

杉宮はそう言い終えると、その場に腰を落とした。

杉宮は肩を切らし、大量の汗をかいている。


呆れたような、でも何故か穏やかな表情で樹はそんな杉宮の元に近づいていく。

そして強引に杉宮の右腕を持ち上げる。

「……痛ぇっ!!何しやがんだ樹!!」

どうやら康太にやられた怪我の痛みで冷や汗をかいていたようだ。

樹は杉宮を見下ろしながら呆れたようにため息を吐く。

「ふぅ。青春も結構だけどさ、ここまでにしなよ要。その腕、ヒビ入ったとかそんな軽く済まないよ?」

杉宮の腕は、鴨居をかばった際に康太に折られてしまっていた。

普通の人ならば痛みで呑気に話してなどいられない。そのくらい重い怪我を負っていた。

それでも杉宮がその痛みに耐えてでも、あんな話をしたのは本当に大切だと鴨居のことを思っているからに他ならなかった。


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