放浪カモメ

「オマエさん気付いていないようだから言うが、今のオマエさんの言行が杉宮を傷付けているんだぞ。」

「――えっ?」

鴨居はゆっくりと杉宮を見る。

杉宮は見つめ返すことができずに下を向いた。

「迷惑をかけることを恐れる。頼ることを躊躇する。謝ることでことなきを得ようとする……」

佐野は煙をふうっと吹き出すと、冷たい視線で鴨居に言う。

「まるで、全く興味のない他人との関わり合い方の様だな。」

鴨居と杉宮、2人の胸が痛んだ。

「あの馬鹿は腕を犠牲にしてまでオマエさんを助けた。それなのにオマエさんときたら、これだ……私はほとほと愛想が尽きそうだよ。」

鴨居は最後の言葉を聞いたのか聞かなかったかのか、研究室から飛び出していった。


< 80 / 328 >

この作品をシェア

pagetop