放浪カモメ
杉宮が珍しく佐野に食って掛かる。
「先生いくらなんでも、あんな言い方……」
佐野は強く睨み付けると言う。
「鴨居への言葉が他人事だとでも思っているのか?お前も本当に餓鬼だな。」
杉宮はそんな佐野の言葉にムッとした表情をする。
佐野は気にせずに話し続けていく。
「杉宮お前。"優しさ"と"甘え"の区別が付いていないんじゃないか?」
一向に自分を睨み付けている杉宮を見て、佐野は白い溜め息をはいた。
「優しさは相手の為になるが、甘えは相手の為にもならん。お前が今鴨居にしようとしているのは、どう考えても後者の方だと思うんだがな?」
諭すように言ってみたのだが、杉宮には届かなかったようだ。
もう佐野を睨むことすら止めて、地面へとそっぽを向いてしまっていた。
「はぁ…言い方が悪かったようだな。いいか?弱ったヤツを甘えさせて、そいつに自分が甘えようするな。叱って嫌われるのが怖いなら友の様に扱うのなんて止めてしまえ。」
佐野は乱暴に煙草を灰皿に押しつけると、いくつかの資料を抱えて部屋から出ていった。
一人残された杉宮がふと外を見ると、鴨居が校門から街へと走っていくのが見えた。
そのほんの数分後。
灰色の空からさ大きな冷たい水滴が落ち始めた。