放浪カモメ
友情の距離感
六月に入り、天気はだんだんと機嫌をそこねてきているようだった。
どしゃ降りの雨が、教室から外を眺める鴨居の視界を霞ませていく。
「カモ、教育実習の日程決まった?」
セミロングの茶髪をなびかせ、鴨居に話し掛けるのは同級生の新田 穂波(にった ほなみ)だ。
「俺、十月の中旬らしいんだよね。マジ楽しみ……ってカモちゃんと聞いてる?」
はしゃぐ新田に気付く様子もなく、鴨居は物思いにふける。
何だろ……頭がボ-っとする
身体に力が入らない感じって言うのかな?
どしゃ降りの雨が心を掻き乱して
暗い空がどうしようもなく怖いんだ
雨が晴れれば気分も明るくなるのか?
はぁ。。。
なんかもう…全部が面倒臭くて
何もかも…どうでもいい。
「…カモ。お前大丈夫か?何かあったんなら相談乗るからな。」
新田が肩をポンと叩いた。
鴨居はそこでやっと新田が隣にいたことに気付いたのだった。
心配そうな顔で鴨居を見つめていた新田だったが、次の講義に遅れないように別教室へと向かっていった。
鴨居はまた外を眺めると、小さくため息を吐く。
「…やば。なんかこれって『五月病』ってやつ?」