放浪カモメ
次の日。

鴨居達の住む千葉県は記録的な豪雨にさらされた。

傘をさしてもズボンや上着までもが濡れてしまう横殴りの雨。

道路や地面には所々大きな水溜まりができ、車が通る度にタイヤに巻き上げられ、濁った水が辺りに散布させられた。


鴨居はここ二週間くらい新田と行動を共にするようになっていた。

「そういや最近カモってこっち来るよな。もしかして要先輩と何かあった?」

新田にふいに核心を突かれてしまって鴨居はたじろぐ。

「なっ、何でそう思うんだよ!?」

鴨居は嘘が下手だ。

いや、下手というのは語弊があるかもしれない。

なぜなら鴨居は嘘をつこうとしてバレるのではなく、嘘をつけずにバレてしまうからだ。

「やっぱりね。顔に書いてあるもん『大好きな先輩と喧嘩しました』って。」

新田は少し意地悪く笑うと、鴨居の反応を楽しんでいるようだった。

「なんてね、嘘。本当はさ最近カモ元気なないから心配で早苗ちゃんに聞いたんだ。」

新田は外見はギャル男で、どうしてもチャラく見られがちなのだが。

実際には両親が教師というだけあって、礼儀やマナーをわきまえているし。

何よりも、友達を大切にする好青年だ。



< 83 / 328 >

この作品をシェア

pagetop