放浪カモメ
新田は少しの間、鴨居の反応を待っていたのだが一向に鴨居が喋りだす気配がないので、自ら切り出す。

「『何で自分が心配されたのか分からない』……そんな顔してる。」

鴨居はハッとして新田の顔を見た。

新田は優しく鴨居に微笑みかけている。

「カモってさ。"友情の距離"どうやって測る?」

「友情の……距離?」

新田は今度は鴨居の反応を待たずに話を続けた。

「例えば俺なんかは。一度でも酒を交わして、一緒に笑ったやつは皆友達だって思ってる。これってかなり距離感が短いよな。」

新田の言葉に耳を傾けている鴨居。

その時、雨は僅かに勢いを失ってきていた。

「それでな。俺が思うにカモって距離感が長すぎるんじゃないかな。カモにとって友達の定義って何?」

そう聞かれて鴨居は返答に詰まってしまった。

それは丁度最近、自分でも考えてみたことでもあった。

「オレは……ある程度信頼できて、何かあったらお互いに助け合えて。相手からも友達だって思われてるのが確信できたら…友達か、な?」

新田は目をパチクリとさせる。

そして何か封を切ったように声を出して笑いだした。


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