放浪カモメ
鴨居はふと空を見上げる。

雲に覆われた空は、今の自分のように暗く陰湿な印象を受けたが。

ただ一つ違うのは、鴨居の心の空には本当に小さな、光が確かに差し込みはじめているのだった。

「穂波くんオレ……杉宮先輩に謝ってくる。」

鴨居はバンと勢い良く机を鳴らすと、堂々と立ち上がった。

「カモ、きっとカモは遠くを見すぎてるだけなんだよ。杉宮先輩はカモが思ってるよりもずっと近くに…ううん。目の前にいたから見えていなかっただけなんだ。」

鴨居は笑顔で頷くと、勢い良く教室を飛び出して行った。

階段を転がるように駈け降り、いつものあの場所へと走っていく。

途中、歩いていた生徒にぶつかったりもしたが、鴨居はその場所へやってきた。

一度だけ深呼吸をして、扉を二回ノックする。

「どうぞー。」

中から目的の人物の声がして、緊張しているのに何故だか鴨居は笑みをこぼすのだった。

静かに扉を開く。

佐野の吸っていた煙草の匂いも何故だか懐かしい。

「杉宮先輩……オレ。」


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