放浪カモメ
第二章〜それは何より長い夏〜
真昼の告白
じめじめとした梅雨が明け、鴨居にとって生涯で一番熱い季節がやってこようとしていた。
七月始め。
暑いというよりは、まだ暖かいと言う表現がしっくりくる。
そんな日。
「はぁ。」
鴨居はいつぞやのリプレイをしているかのように、机に顔を埋めて深いため息を吐く。
しかしどうやら今回は自分の現状に苦悩しているわけでは無さそうだ。
「おーこらこら。人のデスクで辛気臭いため息なんて吐いてくれるなよ、少年。…って、ん?」
そんな鴨居を彼女なりの励まし方で活気づけようとした佐野も、いつかの再現に気付いた様で首をかしげた。
「はは。これで杉宮なんか現れやがったら笑えるのにな……」
すると扉をノックする音が聞こえた。
佐野はこれは再現ではなく、一種のデジャブの類(たぐい)ではないのかと疑い身を恐ばめる。
そして、やはり。というべきか、この男はひょうひょうと現れるのであった。
「あけみちゃん、呼んだ?」
「…なぁ、鴨居この状況どう思う?」
そう振り返った佐野は、今日一番の驚きを目にするのだった。
「へ?何ですかぁ?」
虚ろな目。ダルそうな姿勢。
鴨居は今、心此処に在らず。という状態だった。