放浪カモメ
そして生温い風が汗ばむ肌を撫でるような季節となる。


この日、新田は腹を括っていた。

「今日こそ彼女に告白するんだ……」

こんなピュアな呟きを聞いてしまったら、ほとんどの人が「春だねぇ」などと微笑ましい目を向けるのだろう。

新田穂波。ギャル男ファッションに憧れを持つ、外見とは裏腹に他人思いの好青年である。

しかし、これだけははっきりとさせておきたい。

新田はギャル男に憧れているわけではない。

ギャル男ファッションに憧れを抱いているのだ。


さて、そんなどうでもいいこだわりを持っている新田は今日の三コマ目の講義の後、ある人を近くの公園に呼んでいた。


今どき告白をする場所に公園を選んでしまうとこが新田らしくて微笑ましいではないか。

「きちんと思いを伝えるんだ……そして。」

新田は愛の告白には二種類あると考えている。

一つは、恋人として歩んでいこうという、ある種の意識確認の様なもの。

これは一般に告白と言われるものだろう。




「そんで…きっぱり諦めよう。」

新田はもう一つの方の告白をしようとしていた。



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