放浪カモメ
三コマあった講義もいつの間にか終わっていた。
ずっと告白のイメージトレーニングをしていたら、時間はあっと言う間に過ぎてしまっていたのだ。
そして新田は勇気を振り絞り約束の公園へと向かっていく。
青々とした涼しげな木々の生い茂る公園。
ここは花の都千葉でもかなりポピュラーな場所だ。
しかし千葉県が花の都だと言うのは、大坂が水と光の町だということぐらい、ポピュラーとは言い難かった。
なにはともあれ、そんなハトも散歩している公園の中心には、蓮の葉に囲まれる休憩所がある。
その中の椅子に座ると、新田は目の前に広がる池を眺めた。
「はぁ…幸せそうなカップルばっか。」
池を悠々とボートで横切る四、五組のカップル達。
皆一様にして幸せそうな表情で見つめ合っている。
「そろそろ、来ちゃうんだよ……な。」
左腕にはめた時計を確認すると約束の二時が迫ってきていた。
新田は日陰の涼しい空気を大きく吸い込んむ。
「新田先輩……」
突然の声に、新田は十二分に息を吸っていたことも忘れ、また息を吸ってムセてしまう。
「うっ…げほっ、ごほっ。」
なんとか息を整えた新田は、その人を真っすぐに見つめた。
「急に呼び出してゴメンね、早苗ちゃん。」