放浪カモメ




さかのぼること三日前。

新田は鴨居と一緒に食堂で昼食をとっていた。

「カモって、カレー好きだよな。」

「うん。」

食堂で最も人気のあるカレー。

辛さを五段階から選べるというのが人気の秘密らしい。

「で、カレー好きなくせにマヨかけるんだよな。」

「…うん。」

鴨居はあまり辛さに強くない。

だから下から二番目くらいにすればいいと思うのだが、鴨居から言わしてみればそれは違うらしい。

上から二番目の激辛を頼み、それをマヨネーズの酸味とほのかな甘味で中和することによって、鴨居の求めるカレーの味になるのだそうだ。

なんて、ことを新田は二ヵ月前くらいに鴨居から聞いていた。

「カモってさ今好きな子とかいんの?」

「…んー?」

鴨居は聞いているんだか聞いていないんだか、はっきりしない返事をした。

どうもまだ七月病が治っていないらしく、なんだかボーッとしている。

「カモはさ。自分が人から好意持たれてるの気付いてる?」

「…んー?」

これまた気の無い返事をした鴨居。

普通だったら呆れられるか、怒りを覚えられても仕方がない。

しかし新田は少しも気にしている様子がなかった。

< 95 / 328 >

この作品をシェア

pagetop