放浪カモメ
さかのぼること三日前。
新田は鴨居と一緒に食堂で昼食をとっていた。
「カモって、カレー好きだよな。」
「うん。」
食堂で最も人気のあるカレー。
辛さを五段階から選べるというのが人気の秘密らしい。
「で、カレー好きなくせにマヨかけるんだよな。」
「…うん。」
鴨居はあまり辛さに強くない。
だから下から二番目くらいにすればいいと思うのだが、鴨居から言わしてみればそれは違うらしい。
上から二番目の激辛を頼み、それをマヨネーズの酸味とほのかな甘味で中和することによって、鴨居の求めるカレーの味になるのだそうだ。
なんて、ことを新田は二ヵ月前くらいに鴨居から聞いていた。
「カモってさ今好きな子とかいんの?」
「…んー?」
鴨居は聞いているんだか聞いていないんだか、はっきりしない返事をした。
どうもまだ七月病が治っていないらしく、なんだかボーッとしている。
「カモはさ。自分が人から好意持たれてるの気付いてる?」
「…んー?」
これまた気の無い返事をした鴨居。
普通だったら呆れられるか、怒りを覚えられても仕方がない。
しかし新田は少しも気にしている様子がなかった。