共鳴り
「いや、理乃もちょっと会ってないうちにすっかり大人っぽくなってたしなぁ。
だから今まで何もなかったなんて逆に尊敬するよ。」


あまりにも清人が真顔で言うから、俺は泣きそうな顔のままに笑った。



「つか、お前の妹じゃなかったら普通に喰ってたよ、俺。」


「は?!
絶対あかんよ、それだけは!」


「わかってるって、さすがに俺も。
けどまぁ、あれじゃお前も苦労してんだろうなぁ、って。」


アユ大丈夫かなぁ、なんて言いながら、彼は煙草を咥えた。


アユは理乃の一個下やから、清人も気が気ではないらしいが。



「理乃、抱いてとか言うねんで?」


「そりゃあまた大胆な妹だ。」


「笑い事ちゃうで。」


相変わらず清人は他人事のように言いながら、ビールを煽る。



「けど俺、どうやらそんな理乃のこと好きらしいわ。」


「…今更かよ。」


「なぁ、どうやって愛してやれば良いん?」


問うと、彼は俺から視線を外し、瞳を伏せた。


そして俺に聞かれてもねぇ、なんて言いながら、少しばかり悲しそうな顔をした。



「俺、そういうのよくわかんねぇし。」


あんな家庭で育って、父親がころころ変わるような生活してた清人にとって、一番聞かれたら困る質問だったのかもしれない。


花穂ちゃんでさえも好きになれなかった清人や、きっと今まで誰と付き合っても、誰を抱いても本気やなかったんやと思う。


やっぱり悲しくなった。

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