共鳴り
「お前、どうせここ泊まりたいとか言い出すんだろ?」


「…お見通しやねぇ。」


「良いけどね、別に。
俺はヤり損ねて欲求不満のお前に襲われたくないし、女んとこでも行くから。」


そう言って、清人はビール片手に立ち上がる。



「…お前、女おったん?」


「あぁ、ただのカモだけどね。
俺みたいなのに貢いでくれちゃう女だよ。」


お前、そんなん言う男じゃなかったやん。


それでも清人は多分、俺のためにわざとそう言ったんだと思う。



「で、満足したら帰れよ。」


言葉が出なくなる。


あんなことして、どのツラ下げて理乃と顔合わせればえぇねん、って。



「お前次第なんだよ、結局は。
あんま放置して理乃のこと泣かせてんじゃねぇよ。」


「…簡単に言うなやぁ…」


「抱かないって決めたなら貫けよ。
辛くても見ててやらなきゃ、アイツまた同じこと繰り返すぞ?」


わかってんねん、結局は。


俺も理乃もあそこ以外に帰る場所はないし、お互いしかおらんねんから。



「…キヨなら、どうしてた?」


「わかんねぇけど、多分お前と一緒だよ。
俺は傷つけ方しか知らねぇから。」


そして清人は、まるで子供にするように俺の頭をくしゃくしゃっとし、部屋を出た。


少しずつ、煙草とカルバン・クラインの混じり合った香りが薄くなり、俺は途方に暮れる。


お前、全然俺の酒に付き合ってないやん、って。

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