共鳴り
確かに綺麗な子やし、清人のタイプっぽい感じやとも思う。


けど、だからこそ余計に意味がわからんかった。


他愛もない会話と、そして当たり障りのない時間だけが過ぎ、清人は延長することなく帰ると言う。


この子、何?


第一清人なら、この程度の店のナンバーワンなら狙えたはずやし、どう見ても俺らがカモる系とは違うねん。


そんなん、見ればすぐにわかる。


騙されやすい女ってな、どこか緩いねん。


例えば無意識のうちに口開けてたり、用もなさそうなのにトロトロ街を歩いてたり、身なりがちょっと不格好やったり。


俺らはそういうのを見極めるプロであり、その隙を突いてカモるねん。


なのにレナちゃんは、全然そんなんじゃない。


馬鹿みたいなことを言ってるだけで、その実キャバ嬢としての客に対する心得はちゃんと出来てるし、何より不意に見せる瞳が清人と似ていたから。


この子、一体何やねん、って本気で思った。



「あの子から絞るんやんなぁ?」


だから俺は聞いたんや。



「あぁ、そのうちな。」


清人は俺の方を見ずに答えた。


やっぱりどこか悲しそうに、そしてまるでその気もなさそうに。



「清人は誰にも本気にならんもんなぁ?」


わざとらしく聞いてみたが、答えはない。


それが俺の、一番最初に感じた“嫌な予感”やった。


あの時から俺、レナちゃんが嫌いやってん。

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