共鳴り
夜明けが見えなかった。


長い長いトンネルの先には辿り着けず、真っ黒い色が俺に溶け込んでいく。


涙も血の色も、人の欲望と同じ色にしか見えないんやから。


深夜、帰宅するといつものように、リビングにはラップの掛けられた食事が並んでいて、静けさの帳が下りている。


ため息を混じらせながら、音を立てぬように理乃の部屋の扉を開けると、小さく聞こえた寝息に言葉にならない安堵感を覚えてしまうんや。


息を殺してその傍まで足を進め、彼女の布団を掛け直してやった。



「おやすみ、りぃ。」


ただそれだけが、俺の5年のうちで唯一変わらないこと。


寝静まる理乃を確認して、そして頭を撫で、おやすみと言う。


これが俺の精一杯であり、彼女を見守る術なんや。


例えどんなに嫌われてたとしても、理乃がここに居てくれるなら、俺は何だってしてやんねん。


抱く以外なら、何だって。


理乃は俺が死んだら、泣いてくれるんかなぁ?


なんて、どんだけアホみたいなこと考えてるんやろうなぁ、俺は。



「俺らは来年、どうなってるんやろうねぇ?」


理乃はもう、高三や。


未来が見えないのなんて今に始まったことやないはずなのに、結局のことろ、怖いんや。


少し悲しくなりながら、俺は静かに彼女の部屋を後にした。

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