共鳴り
強制捜査は当然だけど失敗に終わり、警察は苦虫を噛み潰したような顔して帰って行ったのだと言う。


正直俺は、心の底から安堵した。



「チャコールは当分、ノミ行為はせずに普通に営業させろ。」


けど、と嶋さんは言う。



「ポリが勘付かなきゃ良いけどなぁ。」


事前に情報が漏れていたこと、そして内通者がおること。


俺らは結局のことろ、薄皮一枚で繋がってるようなものってことや。



「まぁ、あちらさんの出方次第だけどよぉ。
国光、頼んだぞ。」


頼まれた彼は、相変わらずくちゃくちゃとガムを噛みながら、へらへらと笑っていた。


嫌になるくらいにひとりだけ緊張感がなく、俺は呆れ返るばかりなんやけど。



「犬共は適当に庭でも駆け回ってろよ。」


つまりは俺らは、それぞれ連絡を待ってろ、ってこと。


清人はもうずっと、張り詰めた顔ばかりしている。


いつ電話しても出るし、それ以前に絶対ちゃんと寝てないんやろう、ひどく心配になった。


まぁ、それも当然やろう、チャコールの関係者の誰かが捕まれば、真っ先に清人の名前が上がるんやから。



「俺さ、そのうちいつか、レナのこと殺しそう。」


彼は悲しい目をして口元を緩め、そう自らの手の平へと視線を落とした。


誰かを壊すか、それとも自分が壊れるか。


そこまで追い込まれてる清人は、力なくも笑って見せる。


やからこそ、俺は清人がレナちゃんとこ行くってわかってても、止める術がなかってん。


もう、アイツ自身、心を許せる場所はあの子のことろしかないんやろうから。

< 128 / 339 >

この作品をシェア

pagetop