共鳴り
それから少し経った頃、清人はこそこそと、誰かと頻繁に連絡を取るようになっていた。


もちろんそれはレナちゃんでも他の女でもなく、俺も知らんようなどこかの男や。


“シュウ”という名前らしきものは、端々で聞いた。


多分、そいつを探しているのか、もしくは“シュウ”って男と連絡を取り合っているのか、や。


俺に何も言わないことが、余計に疑惑に繋がってしまう。








「嫌だわー、空気が悪い。」


湿った窓の外の空を見つめ、レイコさんはそう漏らす。


もうすぐ梅雨が来るんやろうな、と俺は、憂鬱さに耐え兼ねため息だけを返してやった。



「ちょっとちょっと、銀二!
アンタまでそんなだと、余計に空気が悪くなっちゃうじゃない。」


空気清浄機でも買おうかしら、なんて笑えない言葉に、俺は視線を滑らせた。


すぐにレイコさんちに逃げ込むのは、俺の悪い癖になっているんやろう。


ここならば、文句言われながらも追い出されたりはしないから。



「嫌ねぇ、みんなピリピリしちゃって。」


レイコさんと組、つーか嶋さんとがどういう関係なんかは未だに知らないけど、彼女は実に詳しく内情を知っていた。


素知らぬ顔してるだけで、多分上の人間しか知らないようなことまで知ってるんやと思う。


そして、それなのに一切関係ない顔してるんやから、すごいっつーか、何つーか。



「アンタも早く仕事戻りなさいよねぇ?
グランディー任されてるんでしょ?」


「あー、はいはい。」


追い払うような仕草に、俺は生返事だけを返してやった。


ぽつり、ぽつりと窓ガラスに雨粒が弾き始め、歪みそうな思考を頼りなくも正させる。

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