共鳴り
“グランディー”って店は、バカラ賭博場や。


つまりは違法カジノであり、それもまた、組の貴重な収入源やった。


チャコールと同じように架空会社を噛ませてはいるけど、こんな状態やし、俺がケツ持ちを任されたんや。


ぶっちゃけ、チャコールと違って金持ちが比較的多いから、こっちではほとんど仕事がないのが実情やけど。


怪しいネオンの看板で溢れ返る歓楽街の、狭いだけの裏通り。


数々の店の裏口の薄汚いドアが並ぶ中に、それはあった。


外から見ればただの潰れたファミレスのように見えるけど、裏口から入って板一枚挟んだ向こうは、別世界。


某一部上場企業の会長サン、あっちは医者で、そっちのヤツは裁判官やで?


俺が言える台詞でもないけど、みんな腐ってんなぁ、って。


こんなん見てたら普通に生きるのが馬鹿馬鹿しくなるほど、こいつらにとってゲーム感覚で、大金が宙を舞うねん。


俺は壁に寄り掛かり、煙草を咥えた。



「銀二さん!」


そう声を掛けられたが、俺が視線を向けることはない。


それでも彼は、へこへことこちらの顔色を伺うように頭を下げる。



「アレ、売ってくださいよ。」


「俺今日、コカなんか持ってへんし。」


「えー、じゃあ誰が持ってます?」


「知らんわ、ボケ。
俺やなくて国光さんにでも聞けや。」


代議士の御子息はコカイン常用者や。


汚なくて、汚なくて、汚なくて堪らない。


清人はいっつもこんなんやってるんやなぁ、なんて思いながら、ため息混じりに視線を宙へと投げた。

< 131 / 339 >

この作品をシェア

pagetop