共鳴り
「じゃあ、国光さんかジルさん呼んでくださいよ。」


依存しすぎだろう。


人はもしかしたら、何かに寄り縋らなきゃ生きていかれへんのかなぁ、って。


落ちるのはどうしてこうも簡単で、そして這い上がるのが難しいのか。


一瞥すれば、彼はまだ、揉み手でへこへこと頭を下げていた。


太い客であり、親が親だけに多少のことは揉み消せるから、だからコイツには売りまくれと国光さんからの命令もあった。


コカインは、本当は皮膚と筋肉の間に虫がはいまわるような感覚が起こる皮膚寄生虫妄想というものあるし、脳への影響も大きいねん。


それでも、誰もコイツがどうなろうと知ったこっちゃない、ってことや。



「なぁ、クスリの何が良いん?」


「あ、銀二さんも一緒にやります?」


呆れ返り、ため息混じりに白灰色を吐き出した。


札束が簡単に右から左に流れ、ゲームに興じて粉の売買。


ここに居る誰も、それを疑問に思うこともなく、非日常を謳歌してる。


俺は女の相手がメインやけど、たまに来ただけでもこの光景にはヘドが出るわ。


やからこそ、常にこんな場所にいる清人があんな顔してる理由が何となくわかるなぁ、って思いながら、揉み手野郎を適当な言葉であしらった。

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