共鳴り
俺の携帯を鳴らすのは、ほとんどが女。


騙されてるとも知らずに幸せそうな顔で、今日の出来事をああでもない、こうでもないと語ってくれる。


そして、俺に捨てられたくない一心で、必死で稼いだ金を渡してくれるんや。


それでも足りずに借金までして、最終的には風俗に行くように仕向けるねんけど。


良心の呵責とは、いつまで経っても折り合いがつけられかった。


泣くくせに、誰も俺を責めたりはしない。


自分が悪いから、嫌われたくないからと言いながら、結局は悲劇のヒロインや。


何かに執着して、依存して、そして気付けば身も心もボロボロになる。



「世の中は寂しいヤツだらけなんやなぁ。」


虚しいだけの、俺の呟き。


そこを突いてるからこそ商売成り立つけど、心の痛みだけは感じていた。


それさえ通り越して感情がなくなるのと、それでもまだ、人間らしさの狭間で揺れるんは、どっちが良いんやろうか。


今日も賑やかな、グランディーの店内。


もしかしたらここに集うやつらもみんな、ただ寂しいだけなんかもなぁ、って。


だからって悪いことしてることには変わりないけど、俺は責められる立場でもないわけやし。



「…あかんわ、雨の日は。」


思考は煙草の煙に混じり、頼りなく揺れるばかり。


俺は無意識のうちにこめかみを押さえ、苦々しさを噛み殺した。

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