共鳴り
例えば感情をコントロール出来るロボットになれたら、どんなに楽だろう。


何も考えずに女を抱いて、そしたら理乃も俺を嫌いになってくれるはずやから。


アイツは未だに俺のことが好きやからこそ、無視してんねん。


そんなことは、もうわかってる。



「…天気、悪くなりそうやな。」


「そうね。」


「雨って神様の涙なんやて。」


言うと、レイコさんは声を上げて笑った。


そして俺に、馬鹿な子ね、と言う。


理乃みたいなきらきらの太陽は、厚い雲に覆われている。


少なくともここに居る間だけは、時間が止まっていると錯覚出来るはずやのに。


なのにそんな中でも俺は、理乃のことを考えているなんて。


メンソールの味に眉を寄せ、煙を吐き出してみれば、嶋さんと同じ煙草やな、と思う。


レイコさんはキッチンに向かい、そんな姿を見送りながら、俺は視線を落とした。

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