共鳴り
「金が欲しいんやったら俺が抱いてやるわ。
俺のこと満足させられたら、いくらでもくれてやる。」


言うと、理乃は唇を噛み締めた。



「無理やりでも文句言えへんぞ?」


少しの沈黙の後、薄っすらと涙の滲み始めた彼女の瞳を前に、俺は掴んでいた手を離した。


そんな覚悟もないくせに、適当なこと言いやがって、って。



「あたしのこと抱きもしないくせに、まだ縛り付けるつもりなんだね。」


自嘲気味なそんな台詞に、俺は心底舌打ちを混じらせそうになる。


どっちが縛ってんのかもわからなくて、ただ、家族で居るために、家族で居るために、と頭の中で反復させる。



「お前が俺に未練タラタラやからそんなひねくれた考えになんねん。」


俺は背を向けた。



「明後日、三者面談やし学校行ったるから。
それまでに進路のことちゃんと考えろ。」


「じゃあ、あたしの気持ちも考えてよ!」


背中越しに、絞り出したような理乃の声が響いた。


俺は拳を握り締め、唇を噛み締める。



「ならお前かて、俺の気持ち考えろや!」


吐き捨て、部屋を出た。


どんだけ我慢してると思ってんねん、どんだけお前のこと大事にしてると思ってんねん、って。


気持ちを押し付け合って、互いを苦しめ合って、結果、こんなことにしかならへんねん。


ガッ、と壁を殴り付け、痛みに耐えた。

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