共鳴り
「お前が最初に言い出したんやろうが!」


弱々しく聞いてくる理乃に、思わず声を荒げてしまう。


結局は俺が悪いんかい、って。



「俺を試すのも大概にせぇや。
あんまナメてたらホンマに後悔すんで?」


ひどく冷たい瞳を投げてやると、彼女はびくっと肩をあげた。


こんなんまるで嶋さんみたいやん、と思うと、悔しさばかりが溢れてくる。


飴と鞭っつーか、やっぱりどっちが振り回してんのかもわからへん。


未だ唇には理乃の感触が残っていて、愛しさと苦しさが同時に湧いて、どうにも出来なくなりそうや。



「俺今日、帰らんから。
晩飯もいらんし、出歩くんちゃうぞ。」


そのまま俺は、家を出た。


向かう先はいつもの如くレイコさんとこで、彼女はやっぱりいつもの如く、「理乃ちゃんが可哀想ね。」と言ってくれる。


銀二は馬鹿ね、本当に馬鹿な子ね、と。






あれ以来、理乃には無視されたままやった。


もうすっかり触れた記憶も曖昧になり、他の女との行為ばかり塗り重ねる。


常に苦しそうな清人には言えなかったし、毎日をただ繰り返した。


やっぱり日常は何も変わらなくて、湖に落ちた波紋のように、広がっただけで消えゆくねん。




銀二。

ギン、ギンちゃん。

お兄ちゃん、ってみんなが呼ぶ。




俺は一体誰やった?



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