共鳴り
雨音によって思考が引き戻された時、清人は珍しくウトウトとしていた。


最近は俺の前でも気を緩めたりしなかったのに、と思わず笑ってしまいそうになる。


まぁ、それくらい疲れてる、ってことやろうけど。


この部屋は寒すぎて、冷たすぎて、季節の感覚がまるでない。


なのに随所には、レナちゃんの気配。


小物やったり星柄のマグカップやったり歯ブラシやったり、ここに来させてる、ってことやろう。


それほどまでに大事にしてるくせに、何で彩とヤんねん、って。



「キヨちゃん、俺もう帰るでー。」


んんっ、と聞いているのかいないのかの生返事に笑い、俺は残り少なくなった缶ビールを手に部屋を出た。


もうすぐ俺ら、25になんねん。


そうやって明日が来て、明後日が来るのに、やっぱり時間は止まったままや。


霧雨のような雨にまぶられ、小さくため息を混じらせた。


なるべく家で過ごす時間を減らそうとして、いつも用もないのにコンビニに立ち入ってしまう。


駐車場に車を止めたところで、ヘッドライトが照らす先に人影を見つけた。



「雨宿り?」


何でレナちゃんに会うんやろう。


彼女は俺を待っていた、と言った。



「…ジル、元気にしてる?」


たったひとつ、それを聞くだけのために。


誰の想いも報われなくて、そして想い合ってるのに一方通行みたいやねん。


雨音は、やっぱり寂しげなものやった。

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