共鳴り
「ったく、言いたいことだけ言いやがって。
これだからせっかちは嫌なんだよ。」


嶋さんは珍しく、国光さんの背中に向かってぐちぐちと言っていた。


が、彼はへらへらと笑いながら聞いてもいない様子で軽やかな足取りやし。


組事務所の壁には、“義理”と達筆な筆文字が額に入れられ飾られていて、そんなの持ち合わせてるヤツはこの中におらんのになぁ、なんて。


そんなことを考えていると、「おい、ギン!」と呼ばれた声に弾かれた。



「お前、レナって女知ってるよなぁ?」


いきなりのことに、動揺を隠すのがやっとやったけど。


「誰ですか?」と言った俺にふっと笑い、彼は座り心地の良さそうな黒革の椅子で足を組む。



「ジルコニアの女だよ。」


「知らへん言うたやんけ。」


気付かぬうちに口調が荒々しくなるが、嶋さんはそれでも表情を崩すことはない。



「向こうはお前のこと知ってるみたいだぞ?」


「そうだったら何やねん。」


とてつもなく嫌な予感がした。


国光さんは影で何かしてるみたいやし、嶋さんもレナちゃんのこと、まだ探ってるみたいやし。



「まぁ、そんなことは良いんだけどな。」


そして嶋さんはまた、ふっと笑った。



「今度改めてあの女に挨拶でもしに行ってやろうかと思ってよぉ。」

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