共鳴り
ぶっちゃけ、“父親”とかよくわからへん。


うちの親父は顔なんか忘れたけど、仕事ばっかしてた影で愛人作ってた人や。


まるで嶋さんと同じで、何が父親やねん、って思う。



「今まで誰が世話してやったか考えろよ。」


「恩着せがましいこと言うなや。」


「じゃあてめぇの命があんのは誰のおかげだ?」


言葉が出なかった。


5年前、俺らは嶋さんの気まぐれな一言によって辛うじて命を繋がれた。


そして、良くも悪くも飼われてるんや。



「なら、俺のこと殺したらえぇやんけ。」


「“俺ら”とは言わねぇんだなぁ?」


「清人に何かしたら、俺は怨霊になってでもアンタを道連れにしたるわ。」


「そりゃあ怖ぇ。」


だけども乾いた拍手をしながら、嶋さんは笑うだけ。


馬鹿にしやがって、と俺は、舌打ちを吐き捨てた。



「レナちゃんにもうちの妹にも、指一本でも触れたら許さへんぞ。」


「なら、俺が触れなきゃ良いんだな?」


「誰でも一緒や、外道が。」


吐き捨て、俺は上着を手にきびすを返した。


相変わらず、一緒の空気吸ってて気分が良くなった試しがない。


試すように人の腹ばかり探りたがり、まるでそれさえゲームのようにしか考えていない。


それでも俺は、知らず知らずのうちにあの人に、父親の影を探してたんかもしれない。


俺の誕生日は、もうすぐそこまで迫っていた。

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