共鳴り
「早よ寝ぇや。」


「…お酒臭いんですけど。」


「だったら近寄んな。」


だけども理乃は、俺の前まで足を進めてきた。


うな垂れながらも瞳だけを上げて確認するが、その顔は無表情のまま。



「何?」


「誕生日。」


「だから、何?」


無意識のうちに彼女を遠ざけようと、次第に言葉尻が冷たくなる。


理乃は少し怒ったような顔になったが、やっぱり真意を読み取れはしないまま。


あれ以来、前にも増して接し方がわからなくて、ずっと俺はこんな調子や。



「そんなにあたしが嫌い?」


「そんなに俺が好きなん?」


全く同じ口調で同じように聞いた瞬間、彼女は唇を噛み締めた。


そして平手を振り上げ、バチン、と俺の頬が張られる。


驚いて呆然としていた瞬間、今度は唇が落ちてきて、それが俺のへと触れる。


辛うじて視線を外すだけで無表情を貫いた俺に、彼女はやっぱり唇を噛み締めた。



「…お前、全然意味わかれへんぞ、その行動。」


何で殴っといてキスすんねん、って。


もう子供じゃなくて、理乃はただの女で、俺らは好き同士やのに。


つーか、俺のこと好きで居続けたって、自分が苦しむだけやのに、何でやねん、って。



「それじゃただの、サカリのついた猫やで?」

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