共鳴り
清人は何も答えず、代わりに視線を外した。


しみったれてるのはお前も一緒やん、とは言わず、肩をすくめて見せてやる。



「なぁキヨ、頼みあんねんけどー。」


「…何でしょうか。」


俺は息を吐いた。



「理乃が泣いてたら、慰めてやって。」


「俺にアイツ抱けって?」


「一瞬でもそれで理乃が楽になれるならえぇねん。」


自分自身がどれだけひどいのかは、今更言うことでもない。


それでも清人やったら任せられるし、上手くやってくれるとも思ってる。


アイツは弱いから誰かに頼らなきゃ生きていけないし、俺を憎ませてやることで少しは楽になれるんやないか、って。



「俺も男の子だからヤろうと思えば出来るけどな?
でも、絶対ヤれないヤツっても居るんだよ。」


清人は真っ直ぐ俺を見た。



「奈緒子さんとアユと理乃だけは、俺の中で“女”じゃねぇのー。」


諦めたように笑うと、清人も小さく口元を緩めてくれる。


何だかんだで俺がレナちゃんに手を出さないのは、それが清人の一番大事なものやから。


清人だって、それと同じで絶対理乃には指一本触れもせんやろう。


それがわかったから「なら頼むでー。」と見送った。



「やっぱりお前は俺のヒーローやなぁ。」


呟いて、そして残りのビールを傾ける。


誰も居なくなった帳は嫌に静けさが増していて、ひとりっきりが身に沁みた。


いつから俺は、こんなに寂しがりになったんやろう。


誰かに頼らなきゃ生きていけないのは、俺も一緒やったんや、って、今更気付いたわ。

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