共鳴り
俺が転がり込むと、決まって清人が帰って来ないのは知っていたので、結局行くところはいつもひとつ。


この時間はさすがに寝てるやろうと思い、相鍵使って勝手に入り、ベッドに忍び込んだ。


広すぎるそれの中で、いつものように背中合わせで横たわると、珍しく彼女はもぞもぞと動き始めた。



「…銀二?」


「あぁ、ごめんな。
起こすつもりなかったんやけど。」


「だったら来ないでちょうだいよ。」


寝起きで不貞腐れ顔のレイコさんは、布団の中で俺を睨む。


曖昧にだけ笑って見せれば、勝手な子ね、と彼女は言う。



「そんな怒らんといてやぁ。
なぁなぁ、レイコさーん!」


わざとらしくその頬をつんつんしてやると、更に彼女は不機嫌さを増させた。


そして俺の指先を払いのけ、レイコさんは体を起こす。



「今のアンタ、気持ち悪い。」


俺もやれやれと体を起こし、煙草を咥えた。


そんなに俺はわかりやすいんやろうか、どうしてこう、みんな鋭いんやろう、って。



「俺、今めっちゃ最悪な男になれる自信あんで?」


「あら、あたしの口を塞いで喉元を噛み切るとでも言いたいみたいね。」


「黙れって言ってんの、わからへん?」


「勝手にうちに来て、今度は脅すの?
それは随分と“最悪な男”だこと。」


言葉を聞いた瞬間、彼女の首に手を掛けるような格好で押し倒した。


本日三度目やん、なんて笑える余裕は、今の俺にはない。


レイコさんの見上げる瞳は相変わらず冷たくて、嘲笑さえ混じっている気がする。



「これでアンタの気が済むなら、どうぞ力を込めたら?」

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