共鳴り
「何や気も抜けるわ。」


そう、肩をすくめて見せた俺に、



「そういやお前、誰?」


清人は思い出したように聞いてきてん。



「…何や、それ。」


「名前だよ、名前。」


「高槻や。
高槻陸くん、覚えとけや。」


「高槻、ね。
俺、一条清人。」


知ってるわ。


そう返すと、何だか力が抜けるように笑いながら、ふたりで煙草を吹かしてた。


清人は不思議やった。


人のことなんて何も聞かないし、自分のことも話さない。


もちろん聞いたら普通に答えるんやけど、それでも最低限やった。


こんなヤツ、周りにおらんかった。





昔の清人ってな、今でこそ考えられへんけど、普通に喋る男やってん。


まぁ、人よりは口数少ないのは元々やろうけど、それでも面白ければ笑ってた。


好きなものは、単車とチャーハン。


密かに無免でバイク通学してて、チャーハンが好きなんは、これまた中学生のくせにラーメン屋でバイトしてたからやと思う。


俺からしたら、何もかも自分でしてて、格好良く見えてん。


やからまぁ、憧れてたんやけどね。

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