共鳴り
「…どういう意味やねん。」


だけども彼は、また鼻で笑ってビールを傾ける。


足元の割れたグラスはそのままで、店員は片付けに来るどころか、近寄っても来ない。



「ジルがお前にも言わない理由、考えてみろ。」


導き出された答えはひとつやった。



「……俺に関係ある、ってことか?」


そうや、何で今までそんな簡単なことにも気付けなかったんやろう。


俺はいつだって、清人から見れば“人質”だったはずや。


アイツが言わないんじゃなくて言えないだけやとするなら、全ての辻褄が合う。



「今度は俺の何をダシにしてん?!」


嶋さんは口を閉ざしたまま。



「答えろや!」


バンッ、と机を叩いた瞬間、彼のポケットの中で携帯が鳴った。


チッと舌打ちを吐き捨てる俺と、気にもしない様子でそれを取り出した嶋さん。


頭の中はめちゃくちゃや。



「…本当か?」


拳を作ったままに瞳だけを上げると、嶋さんは携帯片手に珍しく驚いた顔をしていた。


何かあったんやろうか、と思っていると、彼は「で、捕まえてるのか?」と話し込む。


それから2,3相槌を打ち、嶋さんは電話を終えた。



「園田がやらかしてくれたぜ。」

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