共鳴り
「あー、アゴがガタガタするわぁ。」


「俺もー。
歯が折れてないことが奇跡なんすけど。」


「骨も五臓六腑も無事みたいやし、俺ら手加減されたんやろうねぇ。」


一切手は出さなかった。


殴られ続けて痛すぎやけど、いつも俺らはその程度やねん。


そんなことがまた悔しかった。



「キヨちゃん、男前上がったやん。」


「だろ?」


「うわー。
コイツただのナルシストやでー。」


くだらないことを言い合ってないと、いつものようにどちらからともなく泣き事を漏らしてしまいそうやった。


忘れてしまえば楽なこと、それでも忘れられないものの中でもがいてる。


俺らはただの犬で、躾と称して殴られてるだけのようなもの。



「動物虐待禁止やんなぁ?」


巧いねこと言うね、と清人は笑う。


笑い事ちゃうやろー、と俺が突っ込んで、煙草の苦々しさを吐き出した。


理乃に会いたくなって、でも会えないし、どのみちこんな姿、見せられるはずもない。


寂しさとか悔しさ、苦しさにさいなまれながら生きているんや。


愛って何なんやろう、生きるってどういうことやろう。


人が人として暮らす上で一番大事なそんなこと、俺らにはよくわからんねん。


ただ、痛いってことはつまり、生きてるってこと。


けど俺、マゾちゃうし、こんなん喜べるわけないで。

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