共鳴り
寂しそうに、清人は言った。


こんなんのどこが羨ましいねん、って感じやけど。



「レナちゃんのことか?」


「アイツさ、今あのホストと暮らしてんだって。
国光さんがご丁寧にも教えてくれたよ。」


言葉が出なかった。



「俺が花穂のこと忘れたからさ、俺も多分レナに忘れられんだろうし。
こいうの、因果応報ってヤツ?」


悲しそうな顔で笑いやがって。


俺は清人には、なるべくならこれ以上苦しんでほしくないのに。


それでも、掛けるべき言葉が見つからん。



「お前は他人のことばっか考えすぎやねん。
そんなんやったら、余計自分自身が苦しくなるやん。」


「けど俺、自分の人生とかよくわかんねぇし。」


ホンマはちゃっちゃい子なだけの清人やのに、人一倍苦しんでる。


誰かの所為で傷ついて、なのにそれでも誰かの人生を背負いたがり、そうでなきゃ生きられない男や。



「少なくとも、アユのことはマサに任せとけば大丈夫やろ?」


「そりゃそうなんだけどさ。
マサにばっかり任せるようなダメな兄ちゃんになりたくないし?」


自分に関わる全てのものを背負うつもりなんやろうか。


スーパーマンでも、そんな崇高なことは出来へんのにね。


ヒーローが影で傷ついてるのなんか、誰も知らんなんて、悲しい話や。


頼むから、清人だけでも楽にしてやってほしい。


コイツはもう、十分やねん。

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