共鳴り
「なぁ、それよりお前さぁ。
腕のそれ、どしたの?」


「んあ?」


差された場所に視線を落としてみれば、もう既に痛みさえなくなり、忘れかけていた刻印のことやった。


今まで上着で隠してたけど、半袖Tシャツ着てたからバレてしまったんやろう、嶋さんにつけられたもの。



「ちょっと前のモンやん。」


「誰にやられたんだ?」


「別に、お前の気にすることちゃうやろ?」


さすがに、レナちゃんのこと聞かれて煙草なじられた、とは言えへんし。


ふうん、とだけ言った清人やったけど、目が怖い。


誰かが傷を作るのが異常に嫌いなコイツは、俺やマサが殴られたりした時は、決まってこういう顔になる。


許さないと言った顔で、そういえば、と俺は、なるべく平穏な声で話を変えた。



「腹減ったし、俺が奢るからどっか食いに行こうや。」


「なら、ついでに車出して。」


「何でやねん。
つーか、お前の車どうすんねん。」


「その辺に放置しときゃ良いだろ。」


まったく、コイツは。


こめかみを押さえながら、ため息を混じらせた。


まぁ、気付かれなかっただけ良いやろう、と俺は、上着を羽織る。


あまり納得していないような物憂い顔で、清人は行くぞ、と言った。

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