共鳴り
飯食って、清人の金の回収に付き添って、それが終わった頃にはすっかり夜になっていた。


これからどうしようかと思っていると、俺の携帯が鳴り、女が会いたいと言い出した。


清人を乗せたままだったので、レイコさんちに一旦戻ってからにしようと思っていれば、彼は窓の外を見つめながらに煙草を咥えて、



「事務所、寄ってくんない?」


「えぇけど、どしたん?」


「ちょっと嶋さんに用事あるから。」


「すぐ終わるんやったら待っとくで?」


「いや、良いよ。」


「けどお前、俺おらんかったらアシないやん。」


それでも清人は、良いから、と言った。


何やろう、とは思ったが、深くは追求せず、組事務所の前で清人を降ろしてやった。


珍しく嶋さんの車一台だけが止められていて、窓からは明かりが漏れている。



「じゃあ、お疲れさーん。」


そう言って、清人はさっさと車を降りてしまう。


ミラー越しに去っていく背中を見つめながら、俺はシートに体を預けた。


ぶっちゃけ、女に会いに行く気にならへんし。


そう思いながら、ふと先ほどまで彼が座っていた助手席へと視線を落とせば、見慣れたものが落ちていた。



「アイツ、忘れてるやん。」


清人の煙草のボックスやった。


さっき吸ってたし、多分ポケットから落ちたんやろう。


どうしようかとは思ったけど、清人は煙草ないとイライラするタイプやしなぁ、と思い、仕方なくそれを持ち上げた。


わざわざ届けてやる俺は、多分優しい男やろうなぁ、って。

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