共鳴り
組事務所は、一階が丸々駐車場になっていて、階段を上ると玄関がある。


中は二階建てで、造りとしてはどっかの会社風やけど、割と乱雑としている。


まぁ、当たり前に下には電気もついておらず、誰もおらんかった。


階段を登ると、幹部とか上の方の人らしか入らん部屋があって、嶋さんはいつも、一番奥の扉の向こうにおるんやけど。


多分、清人もそこやろうと思った。


ノックしようとした矢先、中から怒声が聞こえてきて、驚いて手を止め、思わず聞き耳を立ててしまう。



「アイツに何やったのか、って聞いてんだよ!」


「知らねぇよ、そんなことはよぉ。」


清人と、そして嶋さんの声。


“アイツ”ってのはもしかして、俺のこと?


昼間に腕の根性焼きの痕見られてるし、それで清人が嶋さんに詰め寄っているんやろうと思うが。



「何もしねぇ約束だろうが!」


「今は何もしてねぇだろ。」


「今は、って何だよ?!
俺がアイツの分の金稼ぐまでは、何もしねぇ約束だろうが!」


ちょっ、何のこと?


話が全然見えなくて、止めに入るタイミングを失ってしまう。



「一千万アンタの前に突き出せば、陸はこの世界から抜けさせてくれる、っつったじゃねぇかよ!
それまでは何もしねぇって、アンタ言ったろ?!」


陸、と清人の口から5年ぶりに聞いたことよりずっと、その次の言葉にショックを隠しきれなかった。


アイツが必死になって金を稼いでた理由って、俺?

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