共鳴り
清人の先ほどの口ぶりから、レナちゃんの弟の“シュウ”ってのとアイツ、会ったことがあるように聞こえた。


けど、死んだ?


多分、それはまだ最近の話で、そうすると全ての辻褄が合う。


清人は何らかの理由でレナちゃんの弟を探してて、そんで見つけ出したけど、死んだ。


だからこそ、アイツはそんなレナちゃんのこと放っておけなかったんやろう。


不意に、あの子のどこか寂しげな瞳を思い出した。


清人と似てるとは思ってたけど、それならば、俺の制止も聞かずに影で会い続けてた意味もわかる。


けど、それなのに。


そんなレナちゃん苦しめてまで彩と関係を持ったのは、俺のため。


一千万用意すれば、俺がこの世界から抜けられると、嶋さんと密約を交わしたんやろう。


清人はまだ、自分の所為で俺がこんなことになったと思っているんや。


多分、理乃とのことだって、元を辿れば自分の所為だ、と。



「…どんだけ馬鹿やねん、アイツ…」


何ひとつ気付けなかった自分。


何ひとつ言ってくれなかった清人。


悔しさに唇を噛み締め、ガッ、とハンドルを殴った。


俺が理乃のことで頭いっぱいにしてる時、レイコさん口説いてる時、女と戯れてる時ですら、清人は俺のために苦しんでたってことや。


“ゲーム”という守られるとも限らない嶋さんとの約束のために、ただひたすらその身を削っていた、ってこと。


なのに俺は、レナちゃんが清人のこと苦しめてるんやとか、あの子さえおらんかったら、って思ってて。


清人の大事なものを、唯一心の拠り所を、否定してただけやったんや。


レナちゃんも多分それ知ってて、なのに俺には何も言わなかった。


最低最悪やで、俺。

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