共鳴り
聞き返すと、彼女は少し辛そうな顔で口元を緩めた。


それ以上聞くな、っていつもの顔やけど、今日だけは、聞かれるのを怖がるような瞳に見えた。



「そういう悲しそうな顔、したらあかんよ。」


「…それは、あたしのことかしら?」


「俺な、レイコさん。
そういう顔してるヤツ、男でも女でも見てると辛いねん。」


心底驚いたように丸くなった瞳。


きっと、いつも自分がどんな顔してるのか、知らんのやろう。



「キヨもりぃもレナちゃんも、レイコさんもや。
みんなそういう目してて、苦しんでるんやろうなぁ、って思うねん。」


「…あたしが、苦しんでる?」


「だから嶋さんのとこに行くんちゃうん?」


やっぱり驚いたような瞳やった。


腕が振り払われて、でもそれは、肯定と捉えるに値する。



「ふたりの関係、言いたくないんやったら聞かへんよ?
でもな、もう時間が止まったままなのは、どうにかせなあかんやん。」


このままじゃ、どんどんこじれていく。


そして、誰しもが今よりもっと、苦しむことになんねん。


みんながみんな、イバラの棘を持ち、互いに触れる度に相手を傷つける結果にしかならないのは、もう止めたいねん。



「俺はレイコさんかて同じように救ってあげたいよ?」


おこがましい言い方なのかもしれない。


けど、彼女は顔を歪めるように、必死で涙を堪えているようにも見えたんや。


薄暗い部屋で、必死で頼りない月明かりを探してた。


花穂ちゃんの笑顔も昔の理乃の笑顔も、俺らは太陽みたいな存在を、失ってしまったから。


みんなみんな、真っ暗闇の中におるみたいや。

< 236 / 339 >

この作品をシェア

pagetop