共鳴り
「ジルくんはどこまでいっても“他人”でしょ?
そんなもののために動いて、いつか裏切られるとも限らないじゃない。」


「心配してくれてるん?」


言葉は突き放すようやけど、多分彼女はいっぱい裏切られてきたからこそ、臆病になってるだけなんやろう。


俺が笑うと、レイコさんは呆れた様子に変わる。



「俺はアイツを裏切らんし、アイツも俺を裏切らん。
それやし、俺らはレイコさんのことだって裏切ったりせぇへんよ?」


「あたしの話じゃないでしょ。」


「一緒やねん、誰でも。
最初から裏切るつもりなら弱いとこは見せるな、って教えてくれたん、レイコさんやろ?」


やっぱりアンタって馬鹿ね、と彼女の言葉。



「俺な、理乃と一緒に暮らす時に誓ってん。
絶対俺が守ってやる、泣かせたりせぇへん、って。」


「…だから?」


「でも、ダメダメやんか、俺。」


レイコさんは少し笑った。



「やからもうこれ以上、嘘つきたくないし、俺の所為で誰かに悲しい顔させるのも嫌やねん。」


「じゃあ、どうするつもり?」


「とりあえず、当たって砕けてみるわ。」


「…砕けるの?」


「状況変わらへんのやったら、砕けてみるのもアリやん?
目の前のモンぶち壊すしかもう方法ないんやろうし。」


明日どうなるのかなんて、わからへん。


それでも、一分でも一秒でも俺のために清人が苦しい思いをするんは嫌やねん。


俺らはお互いのこと、わからないことだらけになってしまっていた。


だからまた昔みたいに、言わなくてもわかり合える関係に戻りたかっただけやねん。


時計の針が、真上で重なった。

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