共鳴り
視線を戻すと彼は、本当にちょっとだけ困ったような顔をしていた。


思わず眉を寄せると、国光さんはひどく冷たい瞳で声を潜める。



「実はね、昨日から園田の行方がわからないんだ。」


「…は?」


「宮内のおっさん、もしかしたらヤバいかもしれなくて。
そっちの状況掴んでたから、俺も油断してたよ。」



つまり、どういうこと?



「園田は二の次だけど、うちと宮内の関係が刑務部監察課に気付かれてる可能性がある、ってこと。」


“刑務部監察課”は、つまりは警察内部の人間の動きを探るところ。


組と宮内が密通してるかも、って知られているのかもしれない。


俺は思わず身を強張らせた。



「…ヤバいんちゃうん?」


「うん、大分ね。
だからこれ食べたら銀二も一緒に嶋さんのことろに行こう。」


そんなことをしている場合じゃない、とは、もう言えない。


誰かがパクられるかもしれない、ってレベルの話じゃないんやから。



「園田は?」


「今、下山たちに探させてるよ。」


頭が痛くなる話ばかりや。


レイコさんの言う“嫌な予感”って、もしかしてこれやったんかも、って。



「しっかし、国光さんも仕事してたんやなぁ。」


「俺はほら、忍者的な感じだから。」


そしてまた、ははっと笑ったいつもの顔に戻ってしまう。


こんなにへらへらしてるけど、この人の恐ろしいほどの情報力で、組は生き残れてるんやろうと思う。

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