共鳴り
手術室の扉の前で、俺はただ、呆然とすることしか出来なかった。


揉み合った末に刺されたんじゃなくて、清人が自ら刺されに行ったようにも見えたから。


俺らのおる苦しい世界より、花穂ちゃんがおる方選ぶんかもしれん、って思ったら、とてつもない恐怖に包まれる。


清人は死にたがりや。


言わないだけで、いつも空を見上げ、悲しそうに瞳を揺らしていたから。


俺はこんな時まで何も出来へんの?



「そこに立ってても意味はないよ。
とりあえず座って落ち着くんだ。」


泣きそうな顔の俺に、疲弊したため息を吐き出した国光さんが声を掛ける。


初めて見た、ガムを噛んでいない姿。


花穂ちゃんの我が儘を何だかんだで聞いてやる清人やし、あの子が迎えに来たら一緒に行くんかもしれん。


また人が死ぬ、それも大事な大事な親友やのに。



「…国光さん、俺っ…」


「俺らは出来うる限りのことはやったんだ。
大丈夫、ジルくんは闘ってるんだから。」


言葉を遮られ、力強い台詞を向けられた。



「それより、さっき嶋さんから連絡を貰ったんだ。」


俺は顔を上げた。



「園田は現行犯で結局しょっ引かれたらしい。
事後処理はツトムくんに任せて、嶋さんも今、こっちに向かってるって。」


そんなことはどうだって良いねん。


何であの時俺が動かんかったんやろう、あの時俺が代わりに刺されてたら良かったのに、って。


今更になって、後悔の渦に飲み込まれていく。

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