共鳴り
「しかし、これじゃあもう、園田に手は出せないね。」


「そんなんより清人の心配が先やろ!」


国光さんは一瞬驚いて、でもすぐにいぶかしげな顔をする。



「みんな心配してるから、嶋さんだってここに来るんだ。
不安を口にすることしか出来ないなら、銀二こそこの場に居るべきじゃないよ。」


俺は唇を噛み締めた。


国光さんの処置は完璧で、救急車の到着も早く、後は医者に任せることが最善であることはわかってる。


清人はまだちゃんと生きてて、助かるから、とみんなが言っていた。


それはわかってんねん。



「…けどっ…」


やけどアイツ、死を望んでるんやで?


今でもまだ、まぶたの裏には先ほどの残像が残されたままで、思い出す度に体が震える。


宙ぶらりんのオカン、遺影になってしまった花穂ちゃん、そして清人の血の色。


頭の中に次々に浮かび上がり、胃の奥から真っ黒いものが込み上げてくるのが分かる。



「じゃあ銀二は、親友が死ぬことを望むの?」


「…違っ…」


「だったら泣き事なんか言うんじゃない!」


まるで父親のように叱咤された。


びくりとして、また俺は拳を作る。


この5年で初めてこの人の真剣な顔を見て、もうわけがわからんくなりそうやった。


ずっと俺らは鼻で笑われる程度の存在やと思ってたのに、こんなにちゃんと考えてくれてたんや、って。


今更ながらに何故みんな、それでもこの人についていくのかがわかった気がした。

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