共鳴り
「アイツがこの世に留まる理由がないねん!
このままやったらアイツ、ホンマに死ぬかもしれんのや!」


戸惑ったままのレナちゃんの体を揺すりながら、俺は必死で言葉を並べた。


彼女は目を見開いたまま、僅かに瞳を揺らした。



「…レナちゃんが呼んだら、もしかしたらアイツ、帰ってくるかもしれんから…」


そこまで言って、俺は唇を噛み締めた。


ちゃんと説明しなきゃダメなはずなのに、何ひとつ頭の中で上手くまとまらないし、どうして良いのかもわからない。


今更ながらに俺はこの子のことを、何も知らなかったのだと思い知らされる。


俺だって清人とレナちゃんの仲を裂いたうちのひとりやし、この子がホストと暮らしてるのであれば、もうアイツのことなんか気にしていないかもしれない。


他人が死のうが生きようが関係ないのだと、レイコさんも言っていた。


何か言わなければと思っていれば、彼女は瞬間に俺の手を振り払い、目を見張る。



「…何、これ…」


レナちゃんの手には、微かに血の色がついていた。


未だ清人のシャツや俺の服にこびり付いたままのそれが、今は唯一の確かな証拠。



「手術は成功してんねん。」


ただ、意識が戻らないのだと、俺は付け加えた。



「俺が頼める立場ちゃうのもわかってんねん!
それでも、レナちゃんが来てくれる以外、望みないねん!」


「…そんな、こと…」


レナちゃんが迷ってるのもわかる。


俺の言葉だって信じ切れないのもわかるけど、でも、今はレナちゃんしかおらんねん。



「レナちゃんは、アイツが死んでもえぇん?」

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