共鳴り
真っ白い中に包まれ、ベッドの上で清人が眠る。


本当に久しぶりに寝顔を見たけど、穏やかな気持ちにはなれなかった。


点滴の液は規則的に下に落ち、心拍計の音だけが、唯一彼が生きているのだと告げているようだ。


レナちゃんは、恐る恐ると言った様子でその頬に触れた。


大丈夫や、助かるんや、って言い聞かせてきたけど、いざこんな清人の姿を前にすれば、また不安な気持ちが顔を出す。


悔しさとか、そんな色々な気持ちまで思い出し、俺は唇を噛み締めた。



「馬鹿な男やろ?」


気付けば自嘲気味に漏らしていた。


レナちゃんは黙ったままに俺の方を見る。



「俺のために金稼ぐとか、アホやん。
何でもっと、自分のこと考えへんねん。」


「…知ってた、の?」


やっぱり彼女も知ってて、そしてそれでも俺に何も言わなかったのか。


もしかしたらこの子は、俺らのこと全部知った上で、清人から身を引いたのかもしれない。


今も彩と同じ店で働きながら、一体どんな気持ちやったろう。


なのに、それでもここに来てくれたなんて、優しい子や。



「昨日、ふたりが話してんの立ち聞きしてもうてん。
どうせこの馬鹿、何でもかんでも自分の所為やって思うてるに違いないわ。」


ホンマに馬鹿な男やねん。


言ってみれば、自分の情けなさにまた唇を噛み締める。


泣きそうになって、でも俺は強い男の子にならなあかんのに、って。



「清人にはもう、これ以上苦しんでほしくないねん。
でも、そしたらコイツ死ぬやんか?」


どうしたらえぇんやろうね。


呟いた言葉が沈黙に消え、未だ目を覚まさない清人から視線を外した。

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