共鳴り
ふたりっきりにしてやるべきや、と思った。


ってのはただの言い訳で、あのまま居続けたら愚痴ばっかで、ちっちゃい子みたいに泣いてしまいそうやったから。


廊下に出て、深く息を吸い、そして吐き出した。


歩を進め、エレベーターの前まで来たところで「銀二!」という呼び掛けに足が止まる。


振り返るとそこには、国光さんが居た。



「さっき連れてきた子がそうでしょ?」


「あぁ、レナちゃんや。
顔見たことなかったん?」


「うん、嶋さんだけだよ、顔見てんの。」


ふうん、と俺は言った。


国光さんは缶コーヒーを差し出してくれたが、俺はそれを受け取らなかった。


レイコさんの味に慣れすぎてしまい、缶コーヒーはどうにも不味いと思うようになっていたから。



「国光さん、いつからここに居ったん?
嶋さんは?」


「嶋さんは下だよ。
俺も病室行こうかと思ったけど、あんまり人が多くてもダメでしょ?」


ちゃらちゃらで、人の意見はいっつも無視する国光さんらしからぬ発言や。



「…意識、まだ戻ってないみたいだね。」


俺はこくりと頷いた。


レナちゃん連れてきたらもう、万策尽きるっつーか、これ以上どうすることも出来ん。



「ジルくんが一生目を覚まさないなんてこと、きっとないよ。
手術してからまだ一日だって経ってないんだから、待ってあげれば良い。」


“待ってあげる”なんて、この人は誰やろう。


思わず笑ってしまうと、少しだけ気持ちが軽くなるのを感じてしまう。

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