共鳴り
この部屋は廊下の突き当たり、つまりは一番奥に位置していて、ドアから出て左側には、非常階段への扉がある。


それを開けると、びゅうっと風が舞い上がり、また恐ろしくなった。



「これやったら下に行ったんかもしれんで?
この非常階段、病院の裏手に出るんやし。」


だったら誰にも見つからないだろう。


俺を確認するように一瞥した嶋さんは、チッと舌打ちを吐き捨てる。


上に行けば良いのか下に降りれば良いのかで、選択を迫られる形や。



「上だ!」


「…根拠あるん?」


俺はいぶかしげに問うた。



「本気で女と逃げるつもりなら、こんなことになる前に逃げてるだろうよ。」


「けど、上に行ったって屋上しかないやん!」


「だから早く行かなきゃならねぇんだろうが!」


その言葉で、全てが繋がるようにハッとした。


もしかしてアイツ、レナちゃんと死ぬつもりなんかもしれん、って。


弾かれたように階段を昇ると、嶋さんは俺の後を追ってくる。


息が切れ、でも足を止めることは出来なかった。



「…ちょっ、これっ…!」


二階分くらい昇ったところで、俺の足が止まった。


暗がりの中やけど、錆びた青のペンキに染まる階段の中に、それより一層黒い色を発見してしまったから。


これ、間違いなく清人の血やろう。



「やべぇな、本格的に。」

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