共鳴り
舌打ち混じりに嶋さんが呟き、上を見上げる。


屋上まではまだ遠いが、小さな疑惑だったものは、確かな確信へと変わったのだから。


くそっ、と吐き捨て俺は、息も切れ切れに、再び階段を登った。


おっさんのくせに、嶋さんの方が持久力があるのには驚いたが、今はそんなことに感心している場合ではない。


階段を昇るにつれて増える血痕、そして身もすくむほどの恐怖心。


最後の一段に足を掛けた瞬間、目の前が開けた。


何もない屋上は、空との境界線を引くように、フェンスに四方を囲まれている。


ぐるりと見渡した瞬間、嘘であればと願った。



「キヨ!」


俺の声が響き渡り、振り返る顔。


フェンスの向こうには、今まさに飛び降りようとしていたかのような、清人とレナちゃんの姿があった。


僅かに揺れる清人の瞳と、そんな彼を見上げるレナちゃん。


死んだらあかん、絶対あかんねん。


そう思いながら駆け寄ると、金網一枚でしかないはずの距離が、俺らを隔てる。



「何やっとんねん?!」


俺は声を荒げた。



「どういうつもりやねん、何考えてんねん!
お前がさっき言うてたのって、こういうことやったんか?!」


捲くし立てる俺に、だけども清人は息を吐き、目を逸らす。


ふたりして、とてもとても悲しそうな瞳をしていた。



「…許してくれよ、陸…」

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