共鳴り
陸、と彼は言った。


5年振りに向けられた名前に、決意の固さと少しの迷いを見た気がする。


パフォーマンスでも何でもない、清人の本気。



「…レナが居ねぇとダメなんだよ…」


「アホか!
やからふたりで死ぬとか、そんなん俺が許せるとでも思うとんか?!」


ぎしぎしと軋むフェンスの音。


確かに清人にはこれ以上苦しんで欲しくないし、ふたりで幸せになって欲しいとも思ってた。


けど、死ぬことだけはあかんねん、って。


残された側の痛みは、お前誰より知ってるはずやん、って。


ひどく困惑しているような清人に、どうか考え直してくれ、と願った。


レナちゃんの瞳は、ゆっくりと、冷たいままにこちらに向けられる。



「…邪魔、しないでよ…」


俺は言葉が出なかった。


清人よりずっと、死に取り憑かれているかのような瞳。


頼むから、清人を連れていかんといて。



「レナちゃんかて、どうかしてるで!」


更に俺は、必死で声を荒げる。



「大体お前、マサとアユどうすんねん!
兄貴のお前がおったから、あんな状態でもちゃんと育ってたんやろ?!」


頼むから、頼むから、頼むから、って。


折角花穂ちゃんが助けてくれた命を無駄にしたらあかんし、死ぬなんて間違ってる。


そんなんで本当に幸せになんて、なれるはずないねん。



「もう良い。」

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