共鳴り
低く険しい声は、それまで黙って少し向こうで事態を見守っていただけの、嶋さんの吐き出したものだった。


茶番は終わりだ、と彼は言う。



「清人、望みは何だ?」


嶋さんは、一体何を言い出したのだろう。


彼の瞳は真っ直ぐに清人に向けられるが、俺は制止の言葉を持てなかった。


清人は一度下げた瞳を再び上げ、悔しそうに唇を噛み締める。



「…金ならあるだけ全部出すから、だから陸のこと解放してやってください…」


何でそこで俺なん?


お前の方がめっちゃ傷ついてるはずやのに。



「…もう、誰も苦しめないでやってくださいっ…」


清人が吐き出した台詞が、胸をえぐる。


俺らは絶対に、何があろうともこの人に助けを求めるようなことはしなかった。


ずっとプライドとの戦いだった。


なのにアイツは、そんなのも全部かなぐり捨て、こうべを垂れたんや。


助けてください、と清人は言う。


お前今、どんな気持ちで言ってんの?


ホンマは一番大事にしたいレナちゃんより、何で俺のことそこまで優先させるねん、って。



「…キヨ…」


馬鹿で、でも優しくて、お前最高やねん。


俺はもう、その言葉だけで十分やねん。


ずっと黙ったままだった嶋さんは、息を吐くようにして言葉を手繰り寄せた。



「いらねぇよ、もう、お前らなんか。」

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